著書案内

『わたしはいくら?』


Link to Amazon

 

武内晃一 著 早稲田出版 刊

 

フーゾク嬢は、
「現代社会の映し鏡」だ。

セックス依存症、コカイン中毒、ホスト狂い、
境界性人格障害、etc…
今の時代だからこそ
女性に読んで欲しい、人生の指示書!


▼推薦コメント(帯より)

<漫画家> 山本英夫
本物の女ったらしとは、女の表面だけを見ず、女の闇の部分をも見て、とことん付き合う男・・・だからこそ、女に光を当てて、艶やかに仕上げることができるのではないだろうか。女の人生(ドラマ)を作る、本物の女ったらし、武内氏が憎い!

<写真家> 久保吉輝
『女衒』というビジネスに生きる男。そして、彼以上にしたたかに生きる女の美しく、悲しい物語。

<小説家> 海猫沢めろん
強くないけど、弱くもない。楽しいけど、なぜか哀しい ――夜の世界に生きるほんとのあなたを、ちゃんとみてくれる男が、ここにいる。


 CONTENTS
  プロローグ
  わたしはいくら? 早智子
  刑務所(ムショ)からの手紙 聡美
  無気力な女 真希
  セックス依存症 奈々
  ホストクラブは蜜の味 由子
  境界性人格障害 麻美
  群がるものたち 美帆&香澄
  兵隊さん募集中 美和
  封印された笑顔
  sudden death サドンデス 玲子
  エピローグ



本文写真: 篝 一光

■ プロローグ…

 ブラインドを上げ、窓を開けると、気持ちのいい風が吹き込んできた。
 まだ夏の香りは残っているものの、九月に入ると、暑さはだいぶしのぎやすくなる。新宿の高層ビル群は夕陽に照らされ、オレンジ色に光っている。そしてその間を、乾いた風が吹き抜ける。季節感の乏しい東京でも、時折それを感じる瞬間がある。今がその時だった。
 北新宿にあった高級シティホテルを改造したアパートメントの一室。それが俺のオフィス兼住居。一〇〇平米のワンベットルーム。七階にあるので風の通りは良く、通常のマンションよりは、ラウンジ利用やハウスキーピング等のホテルサービスがあるので、使い勝手がいい。リビングには、ノートPCの置かれたデスクが一つ、そして接客用のソファーが置かれている。ここが事務所。打ち合わせや面接はここですることが多い。
 夜の世界に関わり始めて、早いものでもう二〇年にもなる。その間、本当にいろいろなことがあったが、この浮き沈みの激しい世界で、これまでなんとかやってきた。楽しいこともたくさんあったが、思い出したくもない忌まわしい出来事も、同じように数多くある。得たもの、失ったもの、それもここに書ききれないほどある。
 そんなことを思いながらこの部屋を眺めてみると、自分でもよくやってきたな、と思ったりもする。女の手配に汲々としていた二〇代の頃を考えると、まさに隔世の感がある。俺の見ている景色は明らかに変わったが、無論、今のこの時は単なる通過点に過ぎない。これからも同じように成功と失敗を繰り返しながら生きていくのだろう。

・・・・・・
・・・・・・

 これまでたくさんの出会いがあった。そしてその記憶が重なり合って、まるで分厚いアルバムのようになっている。それをパラパラとめくってみようと思う。もちろん、その全てを書けるわけもなく、ただその断片を切り取るだけではあるが、それでも女たちが一生懸命に生きている、その息づかいが少しでも伝われば全く意味のないことでもないだろう。

・・・・・・

■ エピローグ…

 俺の目の前に、数多くの女たちが現れ、そして去っていく。もう名前すら忘れてしまった女もいる。彼女たちの仕事は風俗嬢だ。当然ながら、その仕事の性質上、そう長くは続けられない。だから出会ったからといって、そのままずっとつき合っていくことはできない。俺の存在は、彼女たちのその人生の中で、ほんの一時期、その時間を共有するだけに過ぎないのだ。いずれは違った道を歩くことになる。しかし、少なくともその間だけは、彼女たちの理解者として力になってやりたいと、今までも、そしてこれからも、思い続けている。

・・・・・・
・・・・・・

 彼女たちが何を望み、そのために何をしたのか。それを書きたかった。他の人から見れば、ちっぽけな夢かもしれない。しかし、そのちっぽけな夢にすがって、必死に頑張る彼女たちの姿は、キラキラと光り輝き、そして哀しくなるほど愛しいのだ。
 俺は、きっとこれからも、彼女たちのような風俗嬢と出会い続けていくだろう。これまでに出会った女たち、そしてこれから出会うはずの女たち、その全ての元に、幸せな人生が訪れること、それが俺の願いでもある。
 
※『わたしはいくら?』 プロローグ/エピローグ より抜粋
pagetop ▲
-Close-